インザキューブ

 エレベーターホールにて。

 ッチーン。僕を含めた5,6の男子生徒達が狭い籠の中へわらわらと乗り込む。ドアが閉まり始める。と、そこへ二人の女子生徒が慌てて駆け込んでくる。ドア付近の紳士が無言で、あくまで何の気なしに「開」ボタンを押してやる。閉まりかけた扉が、二人の為に開き始める。
 しかしそこで立ち止まる少女たち。個室の中を見渡す。既に男たちで一杯である。顔を見合わせる二人。そして口を開く。

「一回イかせちゃおっか!」
「そうだね。先イかせてあげよっか。」

 閉まる扉。感じる重力感。加速度を得た箱は上昇を始める。時の偶然により集った数名の男たちは、互いに顔を見合わせる。そして、誰とはなしに口を開いた。

「…イかせちゃおっか、だってさ…。」
 皆考えていた事は同じであった。
神官「…イかされちゃいましたねぇ…。」

「ククッ…ックククククッ………」
「ブッ………プフフッ…プッ」
「フフフフ…ハハハハハハハ…」

 湿った嗤い声が箱を満たす。それ以上誰も何も言わなかった。だが皆何を言わんとするかは分かり切っていた。見知らぬ者同士のはずの僕らは今確実に同じ気持ちを共有していた。顔を見わたせば皆一様ににやけている。イかされちゃった僕たちは、上へ…上へと昇って行くのであった。

 梅雨明け切らぬ蒸暑い日の夕暮れ時。