幻夢録

 日々妄想力を鍛えて17年。そんな私の夢は現実とまがう程に色濃い世界になりつつある。その禁断の世界の片鱗を今宵皆様に少しだけお見せしよう・・・。まっ、書いてるのは夜だけどお前らが読むのは何時だか知りませんけどぉ〜、みたいなっ!!

〜初夜〜
 私はひどく悩んでいた。それというのもどんな服を着たらいいのかとんと見当がつかず悩んでいたのだ。日頃服に頓着しない性分故、その悩みはひとしおであった。そもそも何故私が服などで悩んでいるのか。それは私がこれから彼女の両親にご挨拶に行くことになっていたからだ。
 「別に昭和の頑固オヤジじゃないだからそんなに恰好に拘ることないってば。」
 彼女にそうは言われたが、流石にみっともない格好もできない。かといってあまりに形式ばった恰好をしても悪印象を抱かれる。ここはカジュアルに、かつフォーマルな感じで・・・。普段なら絶対に使わない単語を脳内辞書から引っぱり出しながら悪戦苦闘していた私はふと、制服なら全ての問題を解決できるのではないかと思い至った。しかし、
 「え〜〜!制服ぅ!?結婚でも申し込みに来るの?」
 と、彼女に反対され、これを断念した。
 そうこうしているうちにもう服に構っている時間が残されていないことに気がついた。時間に遅れる者は最低。とかく私は彼女を自室から退出させ、洋服箪笥の一番上にあった服を大急ぎで纏った。
 
 彼女の父は気さくな方だった。偉ぶるわけでもなく笑顔で接してくださった。その上、娘を頼むとまで言われてしまった。彼女の母もまた優しい方で、彼女のような人が育った環境を見て取れた。そんな調子で万事順調に進んでいた時だった。

 「いや〜、しかし。神官君。ちょっといいかな?」

 「はい、何でしょう?」

 急に話苦そうになった彼女の父をみて、少し身構えた。まさか今更になって交際を反対されるのか?そう思い緊張しながら彼の言葉を待っていた。そして彼はこう言った。

 「君、寒くはないのかい?」

 雪の降る北陸の一月。僕はジーパンにタンクトップを着ていたことに気がついた。すべてが凍りついた。



〜第二夜〜
 私は自室で寛いでいた。そんな中、ノックもせずにはいってきたのは妹だった。

「あの、いまいい?」
「じゃまだ。出て行け。」

 私は勝手に部屋に入って来たことに腹を立て、咎めるような口調でそう言った。しかし彼女は「いい?」と聞いておきながらも私の返答などまるで意に介さないように話を進めてきた。

「あの、これ。ちょっと見て。」
 
 そう言って一冊の本を取り出して私の鼻先に押し付けた。私はいい加減にいらいらしてその見てほしいものとやらを引ったくり、明らかに普段と様子の違う妹をギロリと睨みつけてから本の表紙に目を落とした。そしてすぐ上げた。

「は?」

 一瞬世界が停止した。訳が分らなくなった。

「何、これ?」

 それは一見少年漫画のようでもあった。しかしそうでないことは帯の「鬼畜」「調教」「薔薇」等の文字から容易に分かった。極めつけは「アンソロジー」と銘打ったタイトル。誰がどう見ても鬼畜系BL漫画である。私は勇気を出してページをめくった。そこにはジャンプ系漫画が複数(ワン○ースとかだったと記憶している)載っており、タイトルに恥じない内容だった。

「描いたの」

 妹は攻撃の手を緩めない

「私が書いたの。」

 世界が再び全停止した。すでに端のほうから崩壊が始まっていた。

「へっ、へえ〜。上手いなぁ、絵。トーンとか上手に出来てるジャン・・・。」

 私は決して中身に触れなかった。触れたら負けだと確信していた。

「一緒に描いた。」

 「誰と?」

 もう私は疲労しきっていた。これ以上何も聞きたくなかった。しかし無情にもその答えは帰って来た。

 「サヴちゃんと。」

 世界が崩壊した。


*一応言っておくがここでの妹とは私の脳内の妹のことで現実のクソとは何ら関わりが無い。奴は当然そんなものに興味は無い。このことに関しての言及は一切受け付けない